中年おじさんが人生初パーマをかけた結果 |
昨日、人生初のパーマをかけた。
2017年現在、一般市民が最もお手軽にできるバクチである。
パーマの出来上がりは「髪」のみぞ知る。
美容室で放たれる最狂呪文パルプンテ。
なぜパーマをかけようと思ったのか?
まずはそこから説明しよう。
小中高大と野球をやってきたオレは
髪型というものに一切興味がなかった。
ボウズ、短髪。これこそが男の髪型だった。野球人の勲章。
長髪なんてクソだ。日和った男の髪型だ。
そう決めつけていた。
髪のことを考える暇があったら外に出て素振りをする。
手のひらは豆だらけだ。
そんなオレも社会人になり髪型がだんだん決まらなくなってきた。
直毛なのでワックスをつけてもきれいめな感じにならない。
真ん中ワケをすると変だし、七三にしてもすぐ崩れる。
横のボリュームばかり出てきて、縦のボリュームが出せないから
髪が円盤みたいになってくる。
テレビを見ていてもこの芸能人はどうやって髪をセットしているのか
気になってしまう。
おそらくヘアメイクがやっていると思うが普段はどんな髪型なんだろうと
想像してみる。
セットの方法をYouTubeでも見る。
それを真似しようとしてみても、もともとの髪が違うので
真似出来ないし、毎朝時間をかけてセットをする余裕がない。
それでオレはパーマという禁断の果実をかじることを思いついた。
思いついたときは自分で自分を褒めてあげたい、そういった心境。
それで勇気を振り絞り通っていた美容室で言ってみたのだ。
「パーマをかけてみたいんっすけど…」
一瞬の静寂の後、いつもお世話になっている美容師は
「いいと思いますよ~」と応えてくれた。
まずは普段通りのカットが進む。
これから盛大なるパーティーが始まる前の静かなる儀式だ。
カットが終わり髪を洗ってもらいながら
オレは今から人生初のパーマをかけるんだという感慨に浸っていた。
そこでふと疑問に思った。
(パーマかけたらハゲるんじゃねぇ?)
誰もが疑問に持つパーマからのハゲ問題がパーマをかける直前に浮かんできたのだ。
やべぇ、ハゲたらやべぇ。
清水の舞台から飛び降りようとしているのに、生存率0%だと宣告された気分だ。
恐る恐る聞いてみた。
「パーマかけたらハゲるんすか?」
先程は一瞬の静寂の後に返答した美容師が今度は間髪入れずに行ってきた。
「いや大丈夫っすよ~」
この軽い感じを信用したらよいのかどうかわからなかったが
乗りかけた船。もう後戻りもできない。
シャンプーが終わり再び大きい鏡の前に座り、パーマ液なる独特の液体を
頭上に振りかけられる苦行に耐えた。
1時間後。
別人の自分が鏡に写っていた。
これは誰なのか?オレなのか?
見慣れない男が不敵な笑みをたたえている。
「やわらかい雰囲気になりましたねぇ~」
美容師の声で我に帰った。
おぉこれはオレなのか!
「あ、、あ、、ぁ、、はぃ」
ようやく生まれ変わった自分を受け入れることができた。
これはパーマを通して生まれ変わった中年男子の実話である。